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千葉地方裁判所 昭和31年(行モ)1号 決定 1956年4月07日

申立人 大胡直司 外一名

相手方 千葉県知事

主文

相手方が昭和三〇年一〇月一〇日申立人大胡直司に対してなした仮換地の変更指定処分の執行は昭和三一年五月二〇日までこれを停止する。

相手方は右処分の執行を開始したり続行してはならない。

(裁判官 高根義三郎 山崎宏八 浜田正義)

執行停止命令の申立

申立人 大胡直司 外一名

相手方 千葉県知事 柴田等

申立の趣旨

一、相手方が申立人になした昭和三十年十月十日の申立人所有の銚子市清川町二丁目七六一番地所在宅地百五〇坪に関する仮換地変更指定処分の執行はこれを停止せよ。

との御裁判を求める。

申立の理由

一、別紙訴状請求原因記載の理由によるものであるが、若し執行をされる時は、申立人等において償うことのできない損害を生ずるので本件申立に及んだ次第である。

疎明方法

一、登記簿抄本          三通

一、昭和三十年十月十日附書面   一通

一、昭和三十一年一月十四日附書面 一通

一、昭和三十一年三月七日附書面  一通

一、上申書            一通

附属書類

一、委任状            一通

昭和三十一年四月四日

申立代理人弁護士 入江正男

千葉地方裁判所 御中

訴状

原告 大胡直司 外一名

被告 千葉県知事 柴田等

仮換地変更指定取消の訴

訴訟物の価額 金十万円也

貼用印紙額  金千円也

請求の趣旨

一、被告は原告大胡直司に対する昭和三十年十月十日附銚子市清川町二丁目七六一番地宅地一五〇坪に関する仮換地の変更指定並に昭和三十一年二月二十八日附第一三七号銚子市清川町二丁目七六一番地所在門板塀(高六尺、長五尺)土留(間知石一段積二七尺)樹木その他工作物の移転通知を取消せ

一、被告は原告大胡瑞夫に対する昭和三十一年二月二十八日附第一三七号銚子市清川町二丁目七六一番地一、木造瓦葺平家建診療所建坪三坪の移転通知を取消せ

一、訴訟費用は被告の負担とする。

との御判決を求める。

請求の原因

一、原告は大胡直司(以下単に直司という)は前記原告肩書地に宅地百五十坪を所有し、その宅地上に一、木造瓦葺平家建住宅一棟建坪三十坪を所有し、その家屋に現に居住中である。原告大胡瑞夫(以下単に瑞夫という)は直司の養子にして前記直司所有の宅地の一部を借受け同地上に一、木造瓦葺平家建診療所一棟建坪三坪を所有し、同建物にて獣医師を開業中であり、被告は銚子復興土地区画整理事業施行者である。

二、被告より直司に対し昭和三十年十月十日附書面を以て、昭和二十四年二月十日附直司所有の前記宅地に対する仮換地の変更を指定する旨の通知があつたので、直司は同年同月十二日銚子復興事務所に赴き整地課員竹内某に面会したところ、同人は六百分の一の図面を示し乍ら、今度の計画は県道の幅を両側夫々八尺二寸程度拡げる計画であるが、道路に面していない直司の土地は現状の儘にて換地の必要はないかも知れない旨を述べた。尚、前記通知書には調書が作成されている旨の記載があつたが明示されなかつた。直司はその後同年十二月十四日再度、復興事務所に赴き正確なる計画を尋ねたるところ、測量班員某が、図面に専門的物指を当て直司の前記宅地の東側(隣地の立原一郎及び小池某との境界長サ十五間)を幅一尺八寸隣地の立原及び小池に換地として提供する必要ありとの話があつた。前記昭和三十年十月十日附通知書には「別紙図面の通り変更したので通知する」との記載があるが、事実は前記の如く正確には決定していなかつたのであつて、直司は幅一尺八寸(長サ十五間、約四坪五合)の土地の減少は已むを得ないと決心した。

三、ところが、同日(十二月十四日)整地課員竹内某が直司の勤務会社を訪れ、直司に面会し隣地(東側)の訴外立原一郎所有の製樽工場の一部が道路拡張のため道路上に所在する様になるのでその工場を坪数を減少することなく若干西側に移転したいからそれに必要なだけ直司の土地を減少してくれと申入れた。直司は、公正なるべき計画が一私人の利益のために曲げられる不正を憤りこれを拒否した。

四、右直司の拒否あるに拘らず、被告は昭和三十一年一月十日頃、不正にも直司の宅地の中立原一郎並に小池某所有隣地との境界を幅三尺六寸削減することに決定し、杭を打つて了つた。然も整地課長が今度の計画は道路に面した宅地とその次の宅地に変動あるだけで、三軒目の宅地には影響を及ぼさないとのかねての明言にも拘らず、三軒目である直司所有宅地の西側の大川金鹿氏所有地をも直司所有地との境界に副う幅一尺四寸に亘る部分を減少せしめることとした。

五、その後、直司の再三再四に亘る交渉にも拘らず被告はこれに応ぜず遂に本年二月二十八日附書面にて直司に対しては、同年三月七日までに門板塀(高六尺長五尺)土留(間知石一段積二七尺)樹木その他工作物を、瑞夫に対しては同年同月十五日までに木造瓦葺平家建診療所一棟建坪三坪を夫々移転しないときは被告においてこれを移転する旨を通知して来たので、原告等は余りにも一方的なこの書面を夫々返戻したところ、銚子復興事務所長より本年三月七日附書面を以て建物移転について協議したい旨通知して来たので直司が同事務所に赴き協議したが、原告等の要求は容れられず、遂に本年三月三十一日、右家屋等の移転執行のため、同事務所長が執行官として人夫等約四十名を伴い原告宅へ来て執行に着手したので原告等は已むを得ずその場を逃れるために本年四月五日までに自ら前記建物等を移動せしめる旨の誓約書を執行官に渡し執行を中止させた次第である。

六、前記の如く直司所有宅地に対する仮換地の指定は不当であり、公正たるべき計画を建築線を無視して建てられた立原の前記工場を保護するための情実を加味して決定した違法があるので取消さるべきものである。尚、瑞夫は直司所有宅地を使用する権限ある者であるに拘らず両人に対し土地区画整理法第九八条第一項の仮換地の部分の指定なく、突然前記の如く本年二月二十八日書面にて建物移転に関する通知をしたものであつて違法である。

証拠方法

一、口頭弁論の際提出する。

附属書類

一、訴訟委任状 一通

昭和三十一年四月四日

原告訴訟代理人

弁護士 入江正男

千葉地方裁判所 御中

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